京都府教員採用試験(通称:京都府教採)の小論文について解説します。
- 小論文ってどんな試験なんだろう…。
- どんなテーマが出ているの?
- なにを書いたら合格できるの?
このような悩みや不安をお持ちなのではないでしょうか。
京都府教採の小論文は、ただテーマに沿って文章をダラダラ書くだけでは評価されないのです。
正しい型や評価ポイントを知らずに対策しても、合格は勝ち取れません。
そこで本記事では、京都府教員採用試験の小論文について以下の3点を解説します。
- 小論文の概要(試験時間、文字数、評価基準)
- 過去5年分の出題テーマ
- 評価を落とす・評価される模範解答例
この記事に書かれていることを実践すれば、あなたの面接への不安は自信に変わりますよ。
▼教員採用試験の小論文の対策方法は以下の記事もご覧ください。
京都府教員採用試験の小論文とは?
京都府教員採用試験の小論文は、第一次選考で行われます。
筆記試験では判断できない、論理的思考力や読解力、教師としての適性などを総合的に評価します。
文字数と試験時間
文字数に制限はありませんが、解答用紙から600字以内(20文字×30行)で書かなければなりません。
対する試験時間は40分なので、文字数に対する試験時間が極めて短いのが京都府の特徴です。
| 試験時間 | 40分 |
|---|---|
| 文字数 | 制限なし |
| 形式 | 横書き |
| 罫線 | あり |
| マス目 | なし |
| 評価 | A~Cの三段階 |



500字以上を目安に書くといいでしょう!
出題形式
出題形式は、おおむね教育問題や学校教育の在り方に関する課題を扱うテーマが出題される傾向にあります。
京都府の教育施策に関するテーマも出る場合があるので、京都府の資料も読みこんでおくといいでしょう。
評価基準・配点
小論文は2~3つ観点に沿ってA~Cの3段階で評価します。
1つも観点を満たしていなかったり、書いている量・文章が少ないとC評価(=足切り)になるので注意。
評価が悪くなる理由としては、テーマの把握ができていなかったり、文字数が少ないだったりすることが挙げられます。
また、字が汚い(丁寧であればOK)、誤字脱字が多いっていうのもよくないので、注意しながら書きましょう。
【京都府教採】小論文の過去問テーマ
ここでは、京都府教員採用試験の小論文の過去問(テーマ)を紹介します。
出題傾向を把握し、どのようなテーマが重視されているのかを確認しましょう。
令和7年度(2024年実施)
京都府教育委員会では、「第2期京都府教育振興プラン」において、「教員自身が教職生涯を通じて探究心をもって学び続け、時代の変化に対応して求められる資質や能力を身に付けていく必要がある」と示しています。教員自身が探究心をもって学び続け、時代の変化に対応して求められる資質や能力を身に付けていく必要があると示した理由や背景について、あなたの考えを述べなさい。また、これを踏まえて、あなたはどのようなことを実践していきたいと考えますか。具体的に述べなさい。
令和6年度(2023年実施)
京都府教育委員会では、「第2期 京都府教育振興プラン」において、「多様な他者と関わり対話を通じて学びあうという学校の営みを大切にしながら、これからの学びを支えるICTや先端技術を効果的に活用し、時代の変化に応じた教育を行わなければなりません」と示しています。この「多様な他者と関わり対話を通じて学びあうという学校の営み」を大切にするとした理由や背景について、あなたの考えを述べなさい。また、そうした理由や背景を踏まえて、「時代の変化に応じた教育」をあなたはどのように実践していきたいと考えますか。具体的に述べなさい。
令和5年度(2022年実施)
京都府教育委員会では、子どもたちに目指す人間像として「めまぐるしく変化していく社会において、変化を前向きにとらえて主体的に行動し、よりよい社会と幸福な人生を創り出せる人」と定めています。この「目指す人間像」が示された理由や背景について、あなたの考えを述べなさい。また、この「目指す人間像」の実現に向け、あなたはどのような教育活動に取り組んでいきたいと考えますか、具体的に述べなさい。
令和4年度(2021年実施)
京都府教育委員会では、「認知能力と非認知能力を一体的にはぐくむ教育の展開」を学校教育の重点の中に掲げていますが、その必要性について、昨今の子どもを取り巻く状況や課題を踏まえ、あなたの考えを述べなさい。また、これらの能力を一体的にはぐくむために、あなたはどのような取組をしていきたいと考えますか、具体的に述べなさい。
令和3年度(2020年実施)
京都府教育委員会では、「一人一人を大切にし、個性や能力を最大限に伸ばす」ことを重点目標の一つとして掲げ、教育活動を推進しています。すべての児童生徒が豊かな未来を切り拓いていけるよう、それぞれの個性や能力を最大限に伸ばしていく取組を行う上で、どのような点に留意する必要があると考えますか。昨今の子どもを取り巻く状況や課題に触れながら述べなさい。また、このことを踏まえ、具体的にどのような教育活動を進めていこうと思いますか。あなたの考えを述べなさい。
▼もっと過去のテーマを知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
【京都府教採】小論文の模範解答例
では、実際にどんな答案を書ければ評価をもらえるのか。逆に、どんな論文だと不合格になるのかを解説します。
問題
京都府教育委員会では、「第2期京都府教育振興プラン」において、「教員自身が教職生涯を通じて探究心をもって学び続け、時代の変化に対応して求められる資質や能力を身に付けていく必要がある」と示しています。教員自身が探究心をもって学び続け、時代の変化に対応して求められる資質や能力を身に付けていく必要があると示した理由や背景について、あなたの考えを述べなさい。また、これを踏まえて、あなたはどのようなことを実践していきたいと考えますか。具体的に述べなさい。
令和7年度(2024年実施)テーマより
解答例
AI技術の進展や社会のグローバル化など、現代社会はかつてないほどの速度で変化している。このような時代を生きる子どもたちには、知識の暗記だけでなく、自ら課題を見つけ解決する力が求められる。教員は、そうした子どもたちの道標となる存在であり、常に社会の変化にアンテナを張り、自らの指導をアップデートしていく必要があると考える。
私は、何よりもまず子ども一人ひとりの主体性を尊重し、その可能性を最大限に引き出す教育を実践したい。そのためには、子どもとの信頼関係を築くための高いコミュニケーション能力が不可欠である。日々の声かけを大切にし、子どもたちの目線に立って物事を考え、共に悩み、共に喜ぶ。そうした真摯な姿勢で向き合い続けることで、子どもたちの自己肯定感を育んでいきたい。
また、私は学生時代に打ち込んできた部活動の経験を活かし、子どもたちの人間性を育む指導を行いたい。困難な目標に向かって仲間と協力し、努力することの尊さや、勝敗を超えたスポーツマンシップを伝えたいと考えている。部活動指導を通じて、生徒一人ひとりの心の成長に寄り添い、社会でたくましく生きる力を育むことが私の目標である。
京都府の教員として、常に情熱を忘れず、子どもたちの未来のために学び続ける覚悟である。
この答案は、一見すると子どもへの熱意が感じられ、真面目な人柄が伝わってきます。
しかし、教員採用試験の小論文としては評価が低くなる可能性が高い、典型的な「落ちる答案」です。
▼NGポイント①
この部分は、テーマである「教員が学び続けること」への応答になっていません。
書かれているのは「どのような指導をしたいか」という抱負や心構え(精神論)であって、「その指導を実現するために、あなたが何を学び、どのような資質・能力を身に付けるのか」という具体的な自己研鑽の計画が全く述べられていません。
「コミュニケーション能力が不可欠」と問題提起はしていますが、その能力を「どのように磨くのか」という肝心な部分が抜け落ちています。
これでは、思考が浅い、あるいは設問の意図を理解していないと判断されてしまいます。
「…そのためには、多様な背景を持つ子どもや保護者と信頼関係を築くためのコミュニケーション能力が不可欠である。私はその能力を磨くため、現在大学で『教育相談』の授業を履修し、カウンセリングの基本的な理論と技法を学んでいる。さらに、地域のNPOが主催する子ども食堂のボランティアに参加し、様々な状況に置かれた子どもたちとの関わり方を実践的に探究している。こうした学びを深め、一人ひとりの心の声に耳を傾けられる専門性を身に付けたい。」
このように、自身の具体的な学び(アクション)と、目指す教員像を結びつけることで、説得力が格段に増します。また、主体的に学ぶ姿勢を示すことができるのです。
▼NGポイント②
テーマの本筋である「時代の変化に対応して学び続ける」ことから、話が完全に逸れてしまっています。
これは、自分の得意なフィールド(部活動)に話を引き込み、準備してきたことをアピールしたいという気持ちが先行した結果陥りがちな失敗です。
部活動指導が重要でないわけではありませんが、この文脈では「なぜそれが『学び続ける』ことの実践なのか」という論理的な繋がりが全く説明されていません。
これでは、設問に正面から答えていないと見なされ、評価の対象にすらならない可能性があります。
「…また、変化の激しい時代に対応するためには、指導法も絶えず探究する必要がある。例えば部活動指導において、私自身の過去の成功体験だけに頼るのではなく、スポーツ心理学や最新のコーチング理論を学び、科学的根拠に基づいた指導法を探究したい。特に、生徒の主体性を引き出すための練習メニューの構築法や、ICTを活用したパフォーマンス分析の手法について、他校の指導者との研究会にも参加し、積極的に学び続ける。こうした探究的な指導を通じて、生徒の競技力と人間性を共に育んでいきたい。」
このように、指導者自身が学びの主体であることを明確にすることで、テーマに即した内容になります。
より安全なのは、授業改善やICT活用指導力の向上など、テーマとより直接的に結びつく実践を述べることです。
模範解答例(タップして表示)
AIの急速な発展やグローバル化など、社会構造が複雑に変化し、未来予測が困難な時代において、子どもたちには未知の課題に主体的に向き合う探究力が求められる。このような力を育むためには、教員自身が完成された指導者として振る舞うのではなく、子どもたちと共に学ぶ探究者であり続けることが不可欠である。これが、教員が生涯を通じて学び続ける必要がある最大の理由だと考える。
この考えに基づき、私は特に二つの実践に力を注ぎたい。一つ目は、ICTを効果的に活用し、子どもの探究心を最大限に引き出す授業実践である。GIGAスクール構想で整備された端末を単なる調べ学習の道具で終わらせず、協働的な学びや創造的な表現活動に繋げたい。そのために、府や市の研修に積極的に参加し、プログラミング教育や情報モラル教育に関する最新の知見を学び続ける。
二つ目は、多様な背景を持つ子ども一人ひとりに寄り添う専門性の向上だ。特別な支援を要する子や外国にルーツを持つ子など、多様な個性やニーズに応えるため、特別支援教育に関する知識を深めると共に、スクールカウンセラー等の専門家と連携する力を磨きたい。
教員の探究する姿は、子どもの学びへの意欲を喚起する最良の教材となる。京都府の教員として、常に学び続ける姿勢を持ち、子どもたちの可能性を拓く教育に貢献する決意である。
▼他年度の模範解答例も作成しています。以下の記事をご覧ください。
まとめ|【京都府教採】小論文で落ちないために
今回は、京都府教員採用試験における小論文の傾向と過去のテーマをまとめていました。
教員採用試験の小論文は、やるべきことが想像しているよりも多いです。
過去問を眺めるだけでは、小論文を攻略することはできません。過去問を使って答案を作成し、その上で添削を受けることで徐々に上達します。
小論文で落ちる人ほど、書いたら書きっぱなしってことが多いです。答案を書いて誰にも見せないというのは、問題を解いても答え合わせをしないのと同じなので注意しましょう。
小論文が原因で不合格にならにように、早めに(遅くても試験の3ヶ月前を推奨)準備を始めてください。
もし一人での対策に困ったり、不安を感じたりしたときは、遠慮なく僕を頼ってほしいです。あなたが合格できるよう、全力でサポートします!
▼小論文の個別コーチングは以下の記事をご覧ください。
▼京都府教員採用試験の概要や対策方法を以下の記事でまとめています。あわせてご覧ください。
